不合格が分かった直後は、試験の答案を頭の中でもう一度たどりたくなります。あの案件の順位がまずかったのか、任せる相手を間違えたのか。
「何がだめだったのか分からない」
記憶の中の答案をいくら見直しても、答えはまず出てきません。思い出せるのは自分が選んだつもりの答えだけで、比べる相手が無いからです。
次に何を直すかが見えるのは、自分の答えを模範と並べたときだけです。次の試験までにすることも、そこから決まります。
なぜ落ちた理由が分からないのか
比べる基準を持たないまま振り返っているからです。
手元に残るのが自分の記憶と結果だけなら、どこで点を落としたかを確かめる手がかりがありません。会社からの講評が「計画組織力が不足」のような能力の名前で返ってきても、答案のどの案件のどの一行がそれに当たるのかまでは分かりません。
評価の中身は公表されていません。ただ、インバスケットは知識の量より、案件の順位と、誰に何をさせるかの組み立てを見る試験だと考えるのが筋です。答えが一つに決まらない試験です。
インバスケットが難しく感じる理由もここにあります。組み立ての良し悪しは、自分の頭の中だけでは判定できません。
次に直す点をどう特定するのか
時間を計って通して解く演習を、模範と案件ごとに並べ、ずれた箇所を種類ごとに数えることで特定します。
ここで分かるのは、不合格の理由そのものではありません。今の自分の答え方の癖です。
ただ、答え方の癖は放っておくと残りやすいものです。次の試験までに直す点を決めるには、これで十分です。
過去の答案を思い出す代わりに、今の答案を作って調べる。これが出発点です。
本サイトが提供しているインバスケット演習では、架空の会社の案件を時間を計って解き、提出したその場で模範解答と並べて、どの案件の判断がずれたかを確かめることができます。演習1は登録なしで採点まで解けるので、まず1本解いて、自分のずれがどこに出るかを見てみましょう。
手順は次のとおりです。
- 時間を計って、一つの演習を最後まで解く。途中で時間を延ばしたりしない。
- 解き終えたら、模範と案件ごとに並べる。見るのは三か所で、優先項目の順位と根拠に選んだ資料番号、案件ごとに選んだ担い手と処理、手をつけられなかった案件です。
- ずれを一件ずつ、種類の名前をつけて数える。
- ずれた案件の横に、なぜそう判断したかを一言書く。
二つめの「並べる」が、この作業の中心です。たとえば架空の演習で、模範が1位に置いている「主要取引先から届いた出荷ミスの苦情への対応」を、自分は5位に回していたとします。これは順位のずれが一つです。
判断のほうで、模範が営業課長に先方への謝罪と再出荷の手配を任せている案件を、自分は「自分で処理する」と選んでいたとします。こちらは担い手のずれで、これでもう一つです。
こうして数えると、答案の弱さが点数ではなく件数で見えてきます。「判断が甘かった」という感想からは、次に何を直すかが出てきません。「順位のずれが2件、担い手のずれが6件」と数えれば、直す場所は任せる相手の選び方だと決まります。
四つめの一言も省かないことです。苦情の案件を5位に回したのは、資料が短く軽く見えたからか、ほかの資料を読み込んでいて気づくのが遅れたからか。
同じ順位のずれでも、理由が違えば直し方が変わります。前者なら順位の決め方を、後者なら読み方の配分を直すことになります。
1本だけでは、そのずれが癖なのか、その回の問題との相性なのかを区別できません。2本、3本と解いて、同じ種類のずれが続けて出たら、それが自分の失点の型です。
記録には簡単な表を使います。架空の例を一つ置きます。
| ずれの種類 | 1本め | 2本め | 3本め |
|---|---|---|---|
| 順位 | 2件 | 1件 | 2件 |
| 根拠の資料番号の漏れ | 1件 | 2件 | 1件 |
| 担い手 | 6件 | 5件 | 7件 |
| 手つかず | 3件 | 0件 | 0件 |
この人の型は、担い手の選び方です。手つかずは2本め以降に出ていないので、その回の時間の使い方の問題だったと見てかまいません。1本でしか目立たなかったずれは、いったん脇に置きます。
独学のいちばんの弱点は、自分の答えが合っているかを確かめられないことです。演習の数をこなしても、模範と並べる手間を省けば、同じ型を毎回なぞる練習になってしまいます。
量を増やすより、1本ごとの答え合わせを丁寧にする。そのほうが次の本番に効きます。
よくあるずれの型は何か
見ておきたい型は、時間切れ・後回し・担い手の選び違いです。
時間切れは、読む速さより、全件を同じ深さで読むことから起きます。配分は時間配分の考え方にまとめています。
後回しは、解きやすい案件から手をつけて重い案件が後ろに押し出される型です。順位は、放置したら誰が何を失うかで決めます。
担い手の選び違いには、部下に任せるべき案件を自分で処理する抱え込みと、自分が決めるべき案件を部下へ回す丸投げがあります。専決を超える案件を上申せずに自分で片付けるのも、同じ型です。
それぞれの型と直し方はよくある失点の型と判断の示し方で扱っています。
次の試験までに何を変えるのか
型を特定し、一つずつ直し、最後に時間を計って通す、という順で変えます。
試験の間隔は会社ごとに違います。たとえば試験まで半年あるなら、次のように割ります。
- 最初の1か月で、演習を数本解いて模範と並べ、自分の失点の型を一つか二つに絞る。
- 続く数か月は、型を一つずつ直す。後回しの型なら、資料を読む前に各案件の横へ「放置したら誰が何を失うか」を一言書いてから順番を決める。担い手の型なら、処理を選ぶ前に、その案件が自分の専決の範囲か、組織図の誰の役割かを確かめてから選ぶ。
- 最後の1か月ほどは、時間を計って通しで解き、型が再び出ていないかを確かめる。
一つ注意があります。前回の反省から抱え込みを避けようとして、何でも部下に任せる側へ振れると、別の点で崩れることがあります。丸投げも上申の漏れも、それ自体が別のずれです。
直すのは見つけた型だけにとどめ、それ以外の答え方はむやみに変えないことです。
よくある質問
- 会社からのフィードバックはどう読めばよいですか
- 講評が「計画組織力」のような能力の名前で返ってきたら、それが答案のどの場面に当たるかへ置き換えて読みます。計画の力なら、案件ごとに選んだ担い手と処理が、組織の役割に見合っていたかを見直します。講評だけで場面まで絞れない部分は、演習を解いて模範と比べて確かめます。
- 次の試験までに何回くらい練習すればよいですか
- 決まった回数はありません。目安は回数より、模範と比べて同じ種類のずれが出なくなったかどうかです。ずれが消えたら、時間を計って通して解く練習に移ります。
- 落ちた年に何もしなくても、次は受かりますか
- 受かるかどうかは誰にも断定できません。ただ、答え方を変えないまま受ければ、前回と同じ種類のずれを繰り返しやすくなります。何を直すかを決めてから受けるほうが、結果も振り返りやすくなります。