インバスケットの優先順位は何で決まるのか

机の上で書類を重要なものから順に並べ替える会社員の手元

案件を一通り読み、重要度と緊急度の図に置いてみる。部長の催促も、取引先の苦情も、部下の相談も、どれも放っておけないように見えれば、案件は「重要で緊急」の枠に集まり、順位は付きません。

図の軸を、答えやすい一つの問いに絞ると、抜け出すことができます。

その問いは「この案件に手を打たずに置いたら、誰が、何を失うか」です。

なぜ4象限を当てはめても順位が付かないのか

「重要」という言葉の中身が決まっていないからです。

中身を決めないまま判断すると、読んだときの印象がそのまま重さになります。文章の長い案件、言葉の強い案件、役職の高い人からの案件が重く見え、図の4つの枠のうち右上だけが埋まっていきます。

断っておくと、重要度と緊急度で4つに分ける方法は多くの解説が使っているもので、試験の公式な採点基準ではありません。重要度の定義も解説ごとに違います。枠は案件を並べるための道具で、枠に入れるには物差しが要ります。

全部重要に見えるとき、何で決めるのか

放置したら誰が何を失うかで決めます。

答えが出たら、さらに二つを確かめます。失うものがどれだけ大きいか。そして、あとから取り返しがつくか。

この二つで、右上に集まっていた案件に差が付きます。

「誰が」の答えは、具体的にするほど差が付きます。「会社が困る」では差が付きません。取引先なのか、部下なのか、上司なのか。

社外の人や人の安全に及ぶものほど大きく、社内の手続きが遅れるだけのものは小さい。答えを一行にしてみると、重さの違いがはっきりします。

架空の例で考えます。営業課長として着任した直後の未処理箱に、次の4件が並んでいたとします。

案件放置したら失うもの取り返し
取引先から「納品された部品の一部に傷がある」という2行のメール取引先の信用と、ほかの出荷分の品質つきにくい
部下の一人から「最近眠れず、仕事に集中できない」という相談部下の健康と、職場の一人分の戦力つかないことがある
部長から来月の会議資料の下書きの催促部長の準備の時間期日を相談すればつく
総務から、明日が締め切りの社内アンケートの回答依頼集計が一日遅れるつく

順位は表の上から順になります。締め切りの近さだけで並べると、アンケートが上位に来てしまいます。失うものと取り返しで見ると、いちばん下です。

期限の無い案件の置き場所

部下の相談には期限が書かれていません。それでも2位に置きます。

期限が無いのは、急がなくてよいという意味ではありません。誰も期限を決めていないだけで、日ごとに悪くなるものがあります。図の上では「重要だが緊急ではない」枠に見えても、取り返しのつかないものを失うなら上位に置きます。

期限の無い案件で迷ったら、「一週間このままだったらどうなるか」と問い直すと見えてきます。答えが重いほど、順位は上です。

同じ根を持つ案件は束ねる

もう一つ、順位が付かない原因があります。本当は一つの問題が、別々の案件に分かれて届いていることです。

先ほどの部品の傷のメールのほかに、品質管理の担当から「検査の人手が足りず、抜き取り検査の数を減らしている」という報告があり、別の取引先から「最近、返品が増えた」という問い合わせが来ていたとします。この3件は、根が一つです。

ばらばらに並べると、それぞれが中ほどの順位に散り、いちばん大きな問題が見えなくなります。束ねて一件として扱えば、上位に一つの大きな塊ができ、手当ても根に向けることができます。

傷のある部品を一つずつ取り替えても、検査の人手が足りないままなら同じことが起きます。束ねると、打つべき手が「検査の体制を戻す」という一つにまとまります。資料を読みながら関連を見つける手順は、資料の分析の進め方で扱っています。

順位を決めるのは、放置したときに失われるものの大きさです。

順位付けにかける時間は、時間配分の考え方にまとめました。解ける案件から手をつけて重い案件が残る失敗は、よくある失点のパターンでも取り上げています。

声の大きい依頼と小さな報告、どちらを先に置くのか

送り主の立場ではなく、案件の中身で決めます。

もう一つ、架空の例です。

部長から「明日の会議の資料はまだか。至急」と強い調子のメールが来ている。一方で、若手の営業から「お客様の工場で、うちの機械から異音がすると言われました」という一行の報告がある。

部長の言葉は強くても、部長の件は遅れても資料が一日遅れるだけです。異音の件は、放置すれば事故やけが、取引の停止につながり、取り返しがつきません。先に置くのは異音の報告です。

部長の件を判断から落とすわけではありません。資料の作成は部下に任せ、部長には要点だけを今日中に送る処理を選ぶ。上位の案件に時間を回しながら、部長の困りごとにも手を打つことができます。

順位を付けたあと、判断では何を選ぶのか

上位の案件ほど、選ぶ処理が順位の筋と合っているかを確かめます。

判断では、案件ごとに、組織図の人物から誰が動くかを選び、何をするかを選びます。順位で上に置いた案件に軽い処理を選ぶと、分析で付けた順位と判断が食い違います。

先ほどの異音の報告で考えます。選択肢に次の三つがあったとします。

  • 担当の営業に、次の訪問のときに様子を聞かせる
  • 担当の営業に、今日中にお客様へ連絡させ、点検が済むまで機械を止めてもらう
  • サービス部門に、点検の手配を頼む

上位に置いた案件なら、二つ目を選びます。一つ目は手が遅く、三つ目は機械が動いたままになります。自分の権限を超える約束が要るなら、上申を選びます。

一方、社内アンケートは、担当の部下に回答を任せる処理で済みます。

選択肢の選び方は判断の選び方で扱っています。

自分の順位が合っているかをどう確かめるか

模範の順位と並べて、ずれた案件を見ます。

ずれた所に、自分の物差しの癖が出ます。長い文章に引っ張られたのか、役職の高い人の名前に引っ張られたのか、期限の無い案件を軽く見たのか。理由が分かれば、次の演習で同じずれを起こさずに済みます。

本サイトが提供しているインバスケット演習では、架空の会社の資料を読んで優先する項目と順位、誰に何をさせるかを選び、提出するとその場で採点されます。自分の順位と模範の順位が重要度×緊急度の図の上に並ぶので、どの案件をどちらにずらしたかがすぐに分かります。演習1は登録なしで採点まで解くことができます。